君と描く未来【完】
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「なんで…」
近い距離じゃない。
それでも私をまっすぐ捉えているその瞳は間違いなく優木君だ…。
近づくに連れて確信に変わっていく。
「杏子さん。」
はっきりと私の名前を口にしたのだから。
「いつからいたの…?」
「どうして電話にでてくれないんですか?」
怒りを含む寂しげな声。
だけど…
「え…?」
電話なんてあった…?
私はふと思い出して、鞄のそこに埋まっていた携帯電話を取り出した。
そうだった…
昨日の飲み会の時にマナーモードにしたまま…
すっかり忘れていた。
画面には着信履歴が何件も…
おまけに優木君からのメッセージまで。
それは昨日の深夜から今朝にかけて…
「うそ…昨日から…?」
一瞬青ざめた私に、
「いえ…昨日は散々太一さんに付き合わされたので…始発で来ました。」
それでも充分な時間は待たせていたことになる。
「…とりあえず、部屋に行きましょう。」
こんな時間にこんな入口の真ん前で…
ご近所にも迷惑。
私の言葉に一瞬驚いた顔を見せたけど、何も言わず私の後を歩いた。
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