君と描く未来【完】
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「お先に失礼しまーす。」


あれ?

うそ!もうこんな時間!?


「ああ!はいっ、お疲れ様です。」


同僚達の声にハッとした。

時計に目をやれば、とっくに定時を回っていてオフィスに残る人もわずか。



「ふぅ…、もう少し頑張るか。」


水瀬杏子。(ミナセ キョウコ)

今年入社7年目になるこの会社でこの春、部署異動をした。

まだ慣れきれていない仕事をこなすには、決められた就業時間では少し難しくもある。


おかげでここ最近はこんな日が続いていた。

はぁ…。

早く帰りたい。


なんて、家に帰ったって誰もいなければ用事だって約束だってない。


28歳にして、いまだ独身。

結婚のけの字すらもまるでない。


「水瀬さん、お先です。」

あ…。

なんだかんだでもう私一人じゃない…。



すっからかんになってしまったオフィスをグルリと見渡す。


「…飲み物でも買ってこよう。」

小さく息を吐きながら、私は席を立った。




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