たそがれ怪奇譚
[月光篇その2 メビウスの輪](1/5)
その日、黒月は漫画を読みながらポテトチップスを食べていた。
「完全に人間社会に染まりきってるな」
狐月が呆れる。
「悪いか?」
黒月が言った。
「いや悪いとは言ってねえよ。ただ妖狐らしくないなって思っただけだ」
「それを言ったら私も妖狐らしくないですよ」
月影が言う。
「確かにそうだが」
「飯できたぞ」
零二が台所から呼びかける。何故狐月ではなく零二が料理をしているのかというと、狐月は料理が下手だからだ。そういう訳で零二は料理担当になっている。
「じゃあ食べるか」
そうして全員が食卓につく。その日の昼食は豚のしょうが焼きだった。
「うまいな!」
狐月が感心する。しかし零二は表情ひとつ変えない。
「ただレシピ通り作っただけだ」
そうして昼が過ぎ、夜になった。夕食はカレーだった。そして翌日、朝食の時間になった。
「朝食は昨日のカレーの残りでいいですね?」
月影が言う。しかし、
「カレー?何の話をしているんだ?」
狐月がそう言った。
「えっ?でもここに」
カレーの入った鍋を探す。しかし見つからなかった。
「寝ぼけているんですか?月影さん」
零二がそう言った。
「・・・」

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