たそがれ怪奇譚
[月光篇その1 月の一族](1/7)
ある日、月影が急に家の整理整頓を始めた。
「どうした?月影」
狐月が尋ねる。
「今日神埼家に客が来るんです。黒月様がやってくるらしいです」
「黒月って誰だ?かなり恐れているようだが」
「私の一族の事は知っていますね?」
月影が確認する。
「月の一族だろ?妖狐の中でも特別強い力を持つという一族か。それがどうした?」
再び狐月が尋ねる。
「黒月様はその元祖なんです。絶対に黒月様を怒らせてはいけませんよ」
「そりゃまたどうして?」
「黒月様が本気を出すだけで周囲の天候が変わりますから。もし怒らせたら災害が起こりかねません」「わかった。怒らせないよう努力しよう」
青ざめた顔で狐月が言う。
その一時間後くらいに呼び鈴が鳴った。月影が玄関の戸を開ける。
「黒月様、ようこそ神埼家ヘ」
月影が黒月を出迎えているらしい。狐月は黒月の姿を一目見ようと月影の後ろから顔を出す。
「!」
狐月は驚いた。何故なら黒月が子供にしか見えなかったからだ。月影が黒月を恐れているのが滑稽にすら見えた。

- 38 -

前n[*][#]次n
/146 n

⇒しおり挿入


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?

[編集]

[←戻る]