キミ☆オレ
知りたい、キミの心。(1/15)


「ふぁ〜…なんか、朝まで付き合えって言っときながら、ちょっと眠いな……」

「まあ……お互い今週も忙しかったしね」


掛け時計を仰ぎ見ると、まだ12時前。
段々と瞼が重たくなってきて、オレは目を何度か瞬かせた。


ここはオレの部屋。


テーブルの上には、近くのスーパーで調達した酒がまだ残っている。
瀬戸口と二人で、よく食べ、よく飲んだ。
いい具合に酔っぱらっている。明日は休みやし、気分も上々だ。


「ていうか、瀬戸口ってホンマに酒強いねんな?」


少し離れた場所に座る瀬戸口を見ると、彼女の顔は素面の時のそれと何ら変わりがない。ほんまに飲んでる?ってくらいケロリと涼しげ。


オレの方が酒弱いやん?


深夜のお笑い番組が映るテレビをぼんやりとした様子で眺めている瀬戸口は、


「まー大分飲む量抑えてるけどね、これでも」


とさらりと言った。
すごいな、ちょっと羨ましい。


「あ、けど!少しは変わるな」

「…え?」

「饒舌になるし、いつもよりよく笑う」


オレがそう言うと、何故か瀬戸口は目を見開かせ、オレをまじまじと見た。
それから、ぷいと顔を逸らされる。


「へ?オレなんか変なこと言った?」

「……別にっ…!」


ベッドに預けていた体を起こし、瀬戸口の表情を探ろうとする。
と、見つけてしまった。


耳が赤い。茹蛸みたいに真っ赤だ。
これは照れているのか……。オレは、見てはいけないものを見てしまった気がして、なんだかどぎまぎしてしまった。


その時突然、テーブルの上にあったスマホが振動した。
一通のメール。開けてみると、三浦から。


“独り身で寂しい時間を過ごしている斎藤君へ”


なんて、慇懃にもタイトルまでつけられている。


“合コンをドタキャンした斎藤君。僕はついに!運命の相手に出会いました!”という文章から始まるメールは、今日の合コンについて事細かにかかれていた。それはそれは長々と。


「うぜぇ」と、つい零れる本音に、瀬戸口が視界の片隅で首を傾げるのが分かった。


“君も早くステキな女性を見つけて僕と愛を語ろうではないか!
斎藤君、寂しいあまりに一人で慰めちゃやだよん♪♪”


締めくくりまでうざくて、盛大な溜息が落ちた。




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