奪うように愛す

*[神崎芙優子](1/14)
にいるお
び俺のものにするには
どうしたらいいんだ









「おー、コウキ!こっちこっち」


世の中で言う花金。花の金曜日。明日は休みだから仕事帰りらしい人々でごったがえしてる会社近くの居酒屋で、一段とうるさい奥のテーブルから同期の武が満面の笑顔で両手を振りながら手招きする



「おー、わりぃわりぃ」



けだるく返事をして賑やかなテーブルをすり抜けて目的の場所にたどり着くと予想外の人物がそこにいた



「よっ。光貴、元気だったか?相変わらずしけた面だな!」



ニカッとビールを持ち上げ俺に悪戯な笑顔を向けてきた


「た、たまちゃん!?」


「おめぇ、先輩をたまちゃん呼ばわりするなって何回も言っただろ」



ギョッとする俺をよそに、半分呆れながら変わんねぇなぁ〜とぼやき、満面笑顔で玉ちゃんは空いている自分の隣の席に俺を目線(正確には顎)で呼び付ける




玉ちゃんは玉木健太。
もろ体育会系のやけにでかい男。無駄に心もでかくて、優しくて口うるさくて。いつも俺の後ろでドカッと構えてた。たまーに失敗した時はすぐフォローしてくれたし、父親のような存在だった


思えば玉ちゃんがいたから俺は思うように仕事が出来てたんだと思う。そんな玉ちゃんが北海道に転勤になった時は柄にもなく寂しいとか…


少し思ったな




俺にとっては数少ない心を許せる人間の一人だ。



「玉ちゃん、どーしたの?」

「だーかーらお前は〜。」

スーツの上着を脱ぎながら駆け寄る俺にま、いいやと言ってビールを一気に飲み干して今回こっちに戻ってきた事を説明してくれた

元々転勤は栄転だったから今回俺の上司となって戻ってくるらしい



「ま、そういうわけだから今から玉木課長と呼びなさい」


今日はお前も少し飲め、新課長命令だ

やたら新課長を強調し上司らしい偉そうな口調でそう言うと、おばちゃんビール二つ追加ねーと空いたジョッキを突き出し今度はいつもの玉ちゃんらしい無駄に暑苦しい満面の笑顔で言った。




正直最近ただ過ぎて行くばかりの毎日に飽き飽きしていた俺にとっては久しぶりに嬉しい出来事だった




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