企画


 




世界は広い。そんな広い世界の一部でしかない日本。だからといってそんな日本から自力で逃げるなんて出来るはずないし。とりあえず誰かわたしを北極に逃がしてください。


「あほか、ペンギンさんに突かれて怪我するわ」


キリりとした切れ目顔のイケメンのくせにペンギンさんなんて(頭が)可愛いと思われてしまうような呼び方をしないでほしい。そんなやつにあほと言われてしまったわたしはどうすればいい。シロクマさんに殴られて怪我するのならわかるけれどペンギンさんに突かれてるなんてどういう状況?だいたいペンギンさんのお家は南極じゃなかったっけ。だらだらとそんなことを考えていたら、そのことが素晴らしいほど馬鹿らしいことに気づいてしまったわたしは考えるのをやめて目の前の切れ目男をみる。暑いなあってTシャツをパタパタしながらわたしの部屋でくつろいでいる彼の姿は夏男。日焼けした小麦色の肌は元の色を忘れちゃうくらい。


「あのな、確かに暑いのは嫌だけど、北極になんて行かなくてもいいだろう。日本には俺がいるんだから」

「きも」

「いや、たった二文字で人権否定するのやめて。もう、冷たいなあ!」

「冷たい?あんたが暑苦しいんです!わたしにも冷たくして!」

「えっ」


わたしの言葉に驚いた夏男は目をぱちくりとさせる。あほか。冗談さえも本気にしてしまうところもなんだかとても暑苦しい。(とりあえずそれは無理≠チて照れながら言うのやめて)いつもは好きだの可愛いだのサムイことばかり言っているくせに、暑苦しいとはどういうことだ。とりあえずあんた、


「究極にサムイこと言いなさい」

「無茶ぶり好きなお嬢様!?いや、そんなとこも好きだけど!」

「サムッ」


思ったと同時に叫んでしまったのはしょうがないと思います。だって、突っ込んでからのサムイこと言うアクションがナチュラルすぎるんだもん。え、まだサムイこと言ってないんですけど¥ナる切れ目も可愛い。って無意識かい!


「超絶サムかったです」

「え、なに?どこが」

「いや、そんなとこらへんからここ北極かと思った」

「そんなに?!」


いかにもショックですとかいてある顔は残念なイケメンくんだ。サムイ言葉せっかく考えてたのに、と拗ねる姿にちょっとだけ母性本能とやらがちくりと刺激される。なによ、もう。北極以上にサムイところに連れてってくれるの?


「…なんて言うつもりだったの」

「え、…。いや。あらためて聞かれると恥ずかしいかも」

「めんどくさ」

「言います!僕、言いますからその北極以上に冷たい視線やめて!」


はい、じゃあ言いますとわざとらしくコホンと咳ばらいする姿が無性に腹立ったけどそこは目をそらして言葉をまつ。


「オーロラにさえ負けないお前」

「はっ」

「輝くお前はまるでオーロラ」

「ちょ、」

「オーロラよりも愛して…」

「ちょ、もうやめろや!」


アールの発音を言う前に言葉を遮る。なにそのオーロラ推し!やめてよ。オーロラより輝く女の子ってどこの魔法つかい?マジカルすぎるわ!今度はあほじゃなくてばかとしか言ってあげない。サムイこと言えとは言ったけれどそんなに言ってなんて頼んでないと、めちゃくちゃなことを言うわたしに怒ることなく…むしろニコニコしている姿はM以外のなにものでもない。こんなやつがわたしの彼氏だなんて。現実逃避したくなったりもする。現実逃避、しかけるたびにかならず手をひっぱられてとどまるんだけれど。


「まあ、そのくらい好きってことですよ」

「知ってたわ」

「バレバレ!?そんなとこも」

「好きって言ったら許さない!」

「え!あ、Ilove you」

「発音よすぎ!」


 あんたの顔には違和感を感じます
(そんなところも好きだけど!)



黒猫」様提出 6月現実逃避 Ao.○△□ 唄 






  
  
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