着ぐるみカレシ。
ぐるみカレシ。

4. Love is Blind
 〜藤井百々の場合。 [1/6]




身長177p、
4月3日生まれのO型。

今春で19歳。

現在、隣町のアパートで一人暮らし。

遊園地でうさぎの着ぐるみ『夢色★うさたん』のバイト中…


「……何、コレ」


モノクロ調で色味のない私の部屋の中で、女の子らしいピンクの手帳が
よく映える。

これまたピンク色で、細々と書き込まれた文字が目に痛い。


「何って、決まってるじゃない」


誇らしげな百々は、胸をはってビシッと私に向かって人差し指を突き出す。


「トキお爺ちゃんに教わった、杏平さんの個人情報!」

「……」


恋する女の子って、恐ろしい。

こんだけ情報保護が叫ばれている時代に、よくもまぁ…

丸文字で埋め尽くされているページをめくる。

出身校、足のサイズなんてマニアックな情報が並ぶ一番最後に、赤でラインが引いてある項目が一つ。

“好きな女性のタイプ
:手が綺麗な人”…

…これはトキ爺の好みのタイプだったと記憶するのは、私の気のせいだろうか。


「…役に立つの、ていうか信用できるの、コレ」

「当ったり前じゃない!」


百々は自信満々だけど、私はあらゆる意味で心配だ。

百々の圧力に負けて、情報を捏造したんじゃないの、トキ爺。

とりあえず、無断で住所調べだしたら、友達として止めよう…


「それで?どうすんの、これから」


気のない声で聞くと、百々は待ってましたとばかりに立ち上がる。


「こうやって杏平さんのことはいろいろわかったけど、実際に会って喋ったのって3回くらいしかないでしょ?だから、今私がすべきことは直接のアピールよ!」

「まぁ、そうかもね」

「ってことで、行こ!」

「……は?」


適当に相槌をうっていた私は、いきなりの提案についていけない。


「行く、って…どこに?」

「決まってるでしょ、遊園地だよ!」

「い、今から!?」


慌てる私の言葉なんか耳に入らないのか、百々は私の手をとって部屋を飛び出す。


「ちょっと百々!」

「大丈夫、こないだのお詫びも兼ねて、今日はおごるから!」


そういう問題じゃない!


私の心の叫びも知らないで、百々はスキップしそうな足取りで階段を駆け降りる。

きっと心はもう遊園地のうさたんの元に飛んでいるんだろう。


誰か、この暴走少女を
どうにかしてください…





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