亡国の彼方にて
†[第一章](1/34)
 賑わう雑多な街並を、彼女と歩く。

隣を歩く彼女は、自分より頭一つ分背が低い。

そんな彼女を、自分より背が高いと思っていた。              その不可思議さを、彼女に何気なく話してみたことがある。            
 「どうしてそう思ったか、教えてあげようか?」              彼女は回答をもっているのか。無言で頷く。                「それは、あなたが私より弱いから。つまり、私の方が強いから。あなたは気圧されて、錯覚したのよ」             ああ、なるほど。

納得とともに、何ともやるせない気分になったのを覚えている。                   彼女と共に過ごすようになってから、数ヶ月が経とうしていた。                   自分は少しでも彼女に近付いているだろうか。               以前は彼女に殺されることを渇望していたというのに、今はその気持ちが薄れてきている。                   この数ヶ月、本当に色々あった。                     そのことが、気持ちの変化に一役かっているのは間違いない。                    物思いに沈んでいて、彼女が隣にいないことに気付くのが遅れた。                  彼女は自分より数メートル前方を歩いている。

銀髪の頭が人混みに見え隠れしていた。 

 「ちょっ!待ってよ、フィリーアっ!」


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