亡国の彼方にて
†[第一章](1/34)
賑わう雑多な街並を、彼女と歩く。
隣を歩く彼女は、自分より頭一つ分背が低い。
そんな彼女を、自分より背が高いと思っていた。 その不可思議さを、彼女に何気なく話してみたことがある。
「どうしてそう思ったか、教えてあげようか?」 彼女は回答をもっているのか。無言で頷く。 「それは、あなたが私より弱いから。つまり、私の方が強いから。あなたは気圧されて、錯覚したのよ」 ああ、なるほど。
納得とともに、何ともやるせない気分になったのを覚えている。 彼女と共に過ごすようになってから、数ヶ月が経とうしていた。 自分は少しでも彼女に近付いているだろうか。 以前は彼女に殺されることを渇望していたというのに、今はその気持ちが薄れてきている。 この数ヶ月、本当に色々あった。 そのことが、気持ちの変化に一役かっているのは間違いない。 物思いに沈んでいて、彼女が隣にいないことに気付くのが遅れた。 彼女は自分より数メートル前方を歩いている。
銀髪の頭が人混みに見え隠れしていた。
「ちょっ!待ってよ、フィリーアっ!」
- 7 -
前n[*]|[#]次n
⇒しおり挿入
⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?
[編集]
[←戻る]