耳をつんざく程の大音量で、「carrying the torth」の前奏が流れる。
※carrying the torth...陸上競技決勝のファンファーレで流れる曲。作者はこの曲大好き。
俺とトモヤスはベッドから飛び起き、状況を確認する。
「今何時!?」
トモヤスが叫ぶように俺に聞く。うるさすぎてニュアンスでしか聞き取れないが、取り敢えず6時っ!と叫んでおく。
取り敢えず速攻で着替え、制服をすぐ着て学校に行けるように、準備をしてから歯を磨き、麦茶を飲んで外に出る。
危うくG-SHOCKを忘れそうになる等ドタバタはあったものの、外に出る。
「おはようさん」
まず朝に聞いた声はしほだった。
まあなんと、おしとやかな声なのだろう...練習中以外は。
「長距離はこっちだぞー」
内藤の声が、しほの後ろから聞こえる。
それは俺達に言った訳ではなく、集団にいる長距離メンバーに言った事だが、俺達は急いで先輩達の近くに集まる。
近くに渥美先輩の姿も見え、会釈をすると、「おう」と手を振り返してくれた。
「全員揃ったから長距離ジョグ行くぞー」
「女子混成も混ぜてや〜」
20数人の長距離&女子混成メンバーは、一足先にジョグを始める。
学園外周を少し周り、街中を走る。
中学とは違う景色の街並みをゆっくり見たい事だが、生憎俺を囲むアリスは190cm。
虎千代は184cm。
トモヤスは178cmときた。
149.9cmの俺には、精々アリスの胸か虎千代の尻程度しか新鮮な景色は無かった。
「なぁ、学力確認だかってヤツ、どうだった?」
虎千代が俺を見下ろしながら話しかける。クソッ、純粋な眼差しで見るんじゃねぇ...
「あぁ、あの中学生向けのテスト?」
常盤台では、特待生での入学者は学力がどの程度かを確認する為、試験をする。
その結果が入学式のプリントの束にあったのだ。
因数分解や2次方程式、関係代名詞が最高難度のテストなんか、最早紙切れだろうに。
俺はケアレスミスが1つあったようで死にたくなった。
「アタシ、3教科78点だった!」
何かの間違いだと思った。いや、178点じゃないのか?とも思ったが、特待生で入った虎千代の事だ。
恐らく一教科につき30点でもおかしくない。
「なんて酷い...」
アリスもそう呟く。
アリスは頭も良さそうだからなぁ、と、虎千代は言うが、お前がアホなだけだ、とは流石に俺でも言えなかった。
「わたくしは確か...264点でしたわ」
誰も聞いてもいないのに、合計点を競い合おうとしている。
予想通りトモヤスにも、虎千代は聞いてくる。
「俺は180だった」
「なんか普通だな」
「うるせぇよ」
気にしてたのか。何か申し訳ない。
「ヤマトはどうでしたの?」
「298」
全員が、はぁ?と声を揃える。
そしてそのまま、アリスは悔しそうに拳を握り、俺を睨みつける。
「さっすが大和だな!」
虎千代はバシィン、と、痛い程に肩を叩かれる。痛い。
「み、見直しましたわ...」
悔しそうに、アリスはキツい目つきを更にキツくする。
そんなに見られたらドMになりそうだからやめてくれよ、まったく。