[ゲハ](1/12)
***
『最近部活多いね、頑張って。』
「うん、文化祭前だったからね、結構大変。けど明日明後日が終われば多分ずっと休みだから。」
すっかり夏服に移行して、身体は軽い。
私たちは高校2年生の夏を迎えた。
明日のために姿を変えた教室の床から腰を上げ、めぐちゃんを廊下まで見送る。
明日は文化祭だ。
公立高校にしては大きな文化祭で、卒業生や地域の人も沢山訪れる。
部活に入っていない私はクラスの模擬店だけと言うこともあり、
この時期はいつもよりクラスメイトと話す。
『部展があるんだっけ?』
「うん、結構ブースに居てなくちゃで…。」
あはは、と困り眉で笑うめぐちゃんは、
言葉に反して楽しそうだ。
「千香ちゃんは新田くんとまわるの?」
新田くんと私が付き合っていることは、
もうみんなに知られている。
初めこそは怪訝な顔をされたが、
あまりにも新田くんが堂々としているから、
何も、言われることはない。
『どうだろう。』
口ではそう言いながら、2人の空き時間には、一緒にまわる約束もしていた。
「そっか。まわれると良いのにね。」
小さく手を振るめぐちゃんの優しい言葉。
部室へ向かう彼女は今日も可愛い。
彼女にだけは私から、
新田くんと付き合うことを言った。
驚いて、
でも深くは何も聞かず、
おめでとう。とだけ溢して、
私の肩をパシパシと叩いた。
私がめぐちゃんとwawonさんが一緒にいるのを見かけた次の日以来、めぐちゃんは一切その話を口にしなくなった。
だから、私も何も聞かない。
それに、RINGをサインアウトして以来、
あの会議メンバーたちと話していない。
もちろん連絡も取れないし、一緒にゲームもしていない。
RINGでは倉橋という新しいアカウントを作り、
新田くんだけを追加して、
夜、たまにゲームをするくらい。
- 273 -