[crash](1/7)
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放課後一緒に帰ろう、
とまるで恋人みたいなことを言う新田くんに、
分かった。
返事をした昼休み。
だから、めぐちゃんの、
今から寄り道しない?というお誘いには、首を横に振った。
そうか、付き合うと選ぶはイコールだ。
「じゃあこのまま、少しだけ時間ちょうだい。」
玄関掃除に当たっているめぐちゃんと私は、もう掃き終えたタイルの上を無意味に箒で掃くフリをする。
『ん、なに?』
大丈夫。私が掃除をしてる事を知っている新田くんはまだ来ない。
開いた玄関扉から入る弱い風が2人分のスカートをほのかに揺らす。
「朝は聞きそびれちゃったけど、新田くんと、付き合ったんだよね?」
ドストレート
彼女の言葉は決して優しくない。
嘘を吐くわけもなく、私は唇をキュッと結んで、視線だけで頷いた。
「そっか、わあ、そなんだね、おめでとう。」
めぐちゃんは箒を弄ぶように揺らし、私の目を見て小さく微笑んだ。
彼女は知らない。
私の弱いところも、新田くんの優しさも。
「2人もしかして、とは思っていたけれど、流石に今朝のは驚いちゃった。あんなに優しく笑うんだね。」
めぐちゃんは以前から新田くんと私が何かありそうだと言っていた。
私がやんわりとwawonさんとの事を話しても、なお。
まるでめぐちゃんは新田くんと私が何かあればいい、と思っているようだと感じたこともあった。
「お似合いだと思った。」
『本当に?新田くんと私って真逆だから…。』
彼女は、リコピンな新田くんを知らない。それでもお似合いだとどこを見て思うのだろう。
「私意外と鋭いから、見てたら分かるのかもしれない。」
相変わらず微笑んだままのめぐちゃんは、こんなにも可愛い。
彼女相手に素直になれないのは、そうか。wawonさんと一緒にいためぐちゃんから目を背けたからだと気付いた。
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