━━━━━━━━━━━━━━━
『 』(1/1)
━━━━━━━━━━━━━━━
恋愛小説っていうのは大体のパターンがあるんだと思う。
2人は秘密の恋人とか(先生×生徒で)、恋人が死んじゃうとか。
私とユウは危ないカンケイでも、
病気でもない。
幼なじみだし、親同士は仲良いし、私達も仲が良い。
お祭り行って、屋台を荒らしたのはいつだったかな。
あの日一緒にバカ騒ぎしていたユウが今、タキシードを着て私の前にいる。
「カッコイイじゃんwさすがユウだね」
「んだよ、照れんじゃんwお前もかわいいよ」
「ありがとーw」
ちょっとネクタイが曲がってる君がこんなに愛しい。
「ネクタイ、曲がってるw」
「マジか!」
「ほら、動かないのー。全く頼りないお婿さんだなーw」
「悪かったなw」
ネクタイを直してあげれば
ふ…と微笑むユウ。
その笑い方、ずーっと変わんないね。
…ふと時計を見れば、もう時間が迫っていた。
「ユウ、時間やばいよ」
「あ、ホントだ!!」
「会場行こっか」
「ん」
私が好きな笑顔をもう一度見せて
控室を後にするユウ。
あぁ、
これからユウと結婚するんだ。
…私じゃない子が。
そう思ったら じわり、と胸に広がる痛み。
苦しい。悲しい。
ずっと一緒だったのに、
ユウの隣にいるのはもう私じゃない。
あの笑顔も私以外の誰かのもの。
……嫌だ、よ。
なんで私じゃないの?
ユウ、ユウ。
遠いあの日に言っていたら
今も君の隣に私はいたのかな。
『 』と言えなくて
(怖がりな私には)
(作り笑顔の「おめでとう」が)
(似合っているのかも)