☆彼氏の友達はトモダチ? (1/1)
約束の時間、十分前には藤川は既に待ち合わせ場所にいた。
「めちゃくちゃ早い! やる気じゃんこれ、凄い紳士じゃん!」
東口にある噴水の前で読書なんかしちゃってる売り出し中モデル、藤川遠。なにこれ、なんて少女漫画?
いやいや、男は顔じゃない性格だって!
「私の彼氏は榎本だもん!」
「あれ、柚音さん来てたんだ?」
「え、うわっ」
物陰に隠れて独り言を呟いていた私の背後に、いつの間にか藤川がいた。にこーっと、営業スマイルのような笑顔を浮かべている。
「早いですね、まだ十分前」
「ふ、藤川くんだって、もう来てる」
「ああ、うん。割と楽しみだったから」
「へ、へぇ。楽しみだったんだ……」
「柚音さんは?」
「え?」
「柚音さんは、楽しみにしてた?」
「楽しみにしてないことはないけど……ていうか、柚音って……」
「かわいい名前だよね。柚音さん、顔もかわいいしぴったりな名前だよね」
なんて、恥ずかしい台詞をさらっと言い放ち、「いこっか」とスマイルを振りまいた藤川は私の一歩前に立ち歩き始めた。
歩幅が大きいので必死についていこうとしたら、「そっか。女の子って歩幅狭いんだよね」とすぐに私の歩みに合わせてくれた。
なにこのリードされてる感!
お姫様扱い!!
時々、私を気遣って振り返る藤川の顔がとてつもなく優しくて、王子様って本当にいるんだと思った。
正直、どストライクです。