世話焼き後輩とダメ先輩
ホワイトデー編

 三月十四日。

「…おいコラ後藤」
「はい?」
「ん」

 仙道が唐突に突き出したのは白いラッピングの箱。

「…。…爆発でもするんすか?」
「ちっげぇよバカ。後輩にモノ貰っ放しとか気に入らねーから、三倍返しならぬ一割返しだ」
「ああ…つまり、二百円分の何かっすか。たまに律儀っすよね、先輩」
「へへん、にやけてられるのも今のうちだぞ、こんにゃろー。絶対全部一人で食べきれよ。先輩命令だかんな」
「ホワイトデーにはチョコ渡さないと思うんすけど、まさかチョコじゃないっすよね?」
「業務用チョコ二百円分を俺様自ら溶かしたり固めたりした特製チョコだっ!隠し味として恨みと嫉みをたっぷり込めた上にモテなくなる呪いをかけてあるからな…今日からお前も負け犬の仲間入りだ!くけけけけけ!」
「…復讐の為なら黒魔術も覚えるんすか、先輩は」
「俺の純情を弄んだ罰だ。ほら食え、今食え、俺の前で食え!お前の大っ嫌いな手作りチョコレートを!」
「はあ…」

 がさがさ。

「…。意外と見た目はまともなんすね」
「意外とって何だコラ。いいから、とっとと食いやがれ」
「はいはい…」

 ぱく…もぐもぐ。

「どーだ、負のパワーが腹の底から…」
「…いや、普通に美味いっす」
「へ?」
「うん…普通。普通のチョコ。そういえば、先輩ってそこそこ器用なんすよね。本番に弱いだけで」
「ふ…普通とかそこそことか本番弱いとか言うな!つーかお前、手作りチョコ嫌いなんじゃ」
「誰が作ったかわかんないチョコは怖いっすけど、コレは先輩が作ったってわかってますし…先輩の事だから、どうせ呪いの言葉でも呟きながら作っただけで別に異物とか入れてないでしょ?むしろ作り方見ながらちゃんと作ったんだろうなーって感じで、安心して食えますよ」
「んなっ…!」
「ごちそうさま。美味かったっすよ。また作ってください」
「っざけんなバカ!何だよちくしょー、お前なんか…お前なんか一生チョコが食えない呪いにでもかかっちまえー!」
「はいはい。今日はお礼に一杯奢りますから」
「うう…いつかリベンジしてやるぅ…」
「期待してますよー」
「うわぁあああんっ!」

ホワイトデー編
おわり



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