キウイ

 キウイ (1/2)




キウイを食べると喉を酷く痛めるので、普段は決して口にしない。

けれど、薬屋という恋人を抱えている。

薬屋は薬屋のおばあちゃん直伝の由緒ある薬を作るのが非常に得意であり、それにはとある妙薬が含まれていた。

食べる前に喉に塗ると、本当に全く痛くならないので、実家からキウイが送られて来る度にわたしは嬉々として薬屋の宅に向かう。



刺激的に甘いキウイのことは好きである。

それに恋人がそれを食べる姿を(皺の寄る額、突き出る唇、潜められ薄くなる眉尻なんかを)気に入りにしている最中なのである。



「頂きましょう」と部屋に上がると、キウイの精が薬屋を抱きしめていた。

「また来てるの?」

「遅いのね」

精とわたしは恋のライバルである。

薬屋は、恋人を一人に定めるタイプではないからだ。

いいところに来た、この甘えん坊を何とかしてくれないか、妙薬を作るのを止めろと言うんだ、と薬屋は言った。



「あなたはキウイを食べられない女を嫌うでしょう? 愛していらっしゃるんだものね、わたしのことを」

「あんたを好いているんじゃないわ、キウイを好いているのよ」



精は薬屋をあなたと呼び、わたしはその響きを心から憎んでいた。

精は人間ではないのでわたしに歩はあるが、薬屋は頭の回るサイドの識者ではないので、一時的に情をかけるとも考えられる。

わたしはそれを恐れていた。


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