生きた記録
[愛欲](1/15)
中学2年(5)
私は宗助が寝ている横に座り、頭を撫で続けていました。

どれくらいそうしていたでしょう。

日が更に落ち、部屋が暗闇に包まれ始めた頃

宗助が目を覚ました。

「おはよぉ」

眠そうな目を擦りながら言う宗助が可愛くて

私は宗助の頭を、そっと抱き抱えると

「おはよ」

と返しました。

人の温もりが、こんなに心地良いなんて知りませんでした。

「もう暗くなっちゃったね」

宗助はそう言うと、立ち上がり部屋の明かりを点けます。

暗闇に慣れていた目が、光に包まれ眩しさを感じます。

全裸の宗助の輪郭が、ぼんやりしたものからハッキリするまで、そう時間はかかりません。

「あっ!ちょい!ちょっと待って!」

宗助は自分で明かりを点けたのに、慌てています。

『可愛い』

脱ぎ捨てられたシャツと、パンツを慌てて履いています。


宗助は、ほんの数時間前に私の身体を支配したのに

終わってしまうと、あの荒々しさは微塵も感じさせない。

シャツとパンツを履き終えた宗助が私を見て目を丸くします。

「壁にかけてあったシャツを勝手に借りちゃったの。大丈夫だった?」

宗助が私を見て固まっているので、何か大切なシャツを勝手に着てしまったのかと思いました。

でも宗助は、思った事が思わず口に出てしまったかのように、呟きました。

「か…可愛い…」

「え?」

私は、宗助の大きめな白いポロシャツに黒いニーソックスの状態。

下着は当然つけていませんでした。

「香那美の格好…エッチで凄く可愛いよ」

『エッチ?可愛い?』

私の中では合致しない言葉です。

エッチな事は品が無いため罪な事。

可愛いは、理想を受け入れた時に言われる言葉。

「ちょっと立って見せて」

座っていた私を、宗助は立たせます。

「いい!凄くいいよ!」

宗助は何故か喜んでいます。

理由はわかりませんが、宗助はこの格好が気に入ったようでした。

これを着ろ、あれを着ろと言われなくても褒めてくれる。

無償の賛美とでもいうのでしょうか。

私は初めて、人に褒められて『嬉しい』と感じました。


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