「はぁ……」
タユの超音波にあてられたせいか、頭がぼんやりする。
思わず溜め息が出た。
グラームが心配そうに視線をよこしてくるが、どうでもいい。
張っていた糸が切れたようで、今は何も考えられない。
「…フクロウさん。」
いつの間にかフクロウが家から出てきていた。
扉に寄りかかってこちらを窺う気配がする。
「寒いだろう。部屋に戻れ。」
フクロウはそれだけ言うと、家に入っていった。
「…フクロウさん、いつからいました?」
チャエの問いに、グラームは口ごもった。
何も考えたくないと思いながらも、一応の危機感をもったチャエは、無言でグラームを見た。
出来る限り圧をかけるようにして。
「…無線を切った直後。」
「そう、ですか…」
だとしたら、取り乱した姿を見られたことになる。
無線を使っていたことも見られている。
タユのことだから、超音波は自分のみに発生させただろう。
会話は聞かれていない。
「…いや、これは無理」
いくらでも嘘を吐いて隠せるが、隠しても意味がない。
チャエ個人では手に負えない。
フクロウをもってしても難しいだろう。
「何してんの。早く。」
フクロウが開いた窓から声をかけた。
チャエは腹を括って扉を開けた。
首を傾げながら、グラームはその後をついていき家に入った。