狩る者と狩られる者
[天秤](1/6)




「はぁ……」




タユの超音波にあてられたせいか、頭がぼんやりする。



思わず溜め息が出た。



グラームが心配そうに視線をよこしてくるが、どうでもいい。



張っていた糸が切れたようで、今は何も考えられない。




「…フクロウさん。」




いつの間にかフクロウが家から出てきていた。



扉に寄りかかってこちらを窺う気配がする。




「寒いだろう。部屋に戻れ。」




フクロウはそれだけ言うと、家に入っていった。




「…フクロウさん、いつからいました?」




チャエの問いに、グラームは口ごもった。



何も考えたくないと思いながらも、一応の危機感をもったチャエは、無言でグラームを見た。



出来る限り圧をかけるようにして。




「…無線を切った直後。」




「そう、ですか…」




だとしたら、取り乱した姿を見られたことになる。



無線を使っていたことも見られている。



タユのことだから、超音波は自分のみに発生させただろう。



会話は聞かれていない。




「…いや、これは無理」




いくらでも嘘を吐いて隠せるが、隠しても意味がない。



チャエ個人では手に負えない。



フクロウをもってしても難しいだろう。




「何してんの。早く。」




フクロウが開いた窓から声をかけた。



チャエは腹を括って扉を開けた。



首を傾げながら、グラームはその後をついていき家に入った。




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