グラームは、無言で木の幹によりかかっていた。
「何であんたがここにいるんですか?」
チャエは尋ねながら、近づいた。
二人の距離は、約3メートル。
チャエの本能が、それ以上の接近を拒んだ。
「貴方が直々に、被害者を医者の元へ連れてくること。それも獣人の手を借りること。2つの理由をお聞かせ願いたいのですが、よろしいでしょうか。」
皮肉げに笑いながら、チャエは言った。
チャエはもう、ベットに横になっていた女が、狩猟機関のトラブルの被害者であることはわかっていた。
自分の血液が採血されたことから、女が獣人で、獣が自分と同じ猫であること。
女とはいえ獣人なのに死にかけていることから、狩猟機関で暴れているハンターはもしかしたら獣人なのかもしれないということ。
獣人でなくとも獣人を殺すことが出来る実力、または相応の武器を所持していること。
それらを察した。
「わかった、話す。だが、敬語はやめてくれ。どうせ敬うつもりなどないだろう?」
「あ、ばれました?けど、俺には俺の型がありますから。中途半端な敬語ですけど、そこは気にしないでください。」
どうぞ?
瞳で促すチャエ。
これがチャエの完全防備状態。