東方夕刃録
◎[第十八話](1/3)
交渉はこれにて終わり。ここから先は力押しである。
時は過ぎ、新月の日が明日に迫った日。

「異変への不干渉?」

「ああ」

「ふ〜ん。貴方のことだからそれなりの対価を用意しているんでしょう?」

肘を突き手に顎を乗せながら問う。

カリスマが溢れる姿だ。

「これだ」

渡したのは血の盟約の印である小刀。

「これで、レミリアならびにレミリアの妹の異変への不干渉を約束してほしい」

「あら、紅魔館の勢力ではなくて?」

「紅魔館の勢力全部を押さえるほどそれに価値はあるまい。一番敵になって困るのは吸血鬼、特にレミリアだ。個人的にはメイリンや咲夜が来ても困るのだがな」

「ずいぶんと評価が高いのね。貴方も私の天敵だったんじゃなかったかしら?」

「そうだな。だが、おそらく一対一であれば七:三で俺が負けるだろう。自力の差だ」

「そうかしら?」

「いや、まだ下がるな。実際にやりあったことがないゆえ、受ける感触で判断した最低ラインだ。実際にやれば九対一程かもしれん」

「咲夜、貴方はどう思う?」

「妥当だと思います」

実際に夕霧と戦ったことがある咲夜が言った。

「ふ〜ん。そんなもんなのね。わかったわ、私とフランは今回の異変には干渉しない」

「恩にきる」

「いいわ、結果がわかってることに参加してもつまらないもの。今回は見て楽しむことにするわ」

「うむ、では楽しめる見せ物になるように努力しようか」

レミリアの言い様に対して毒を含ませて返した夕霧。

言い返したりしないところはさすがか。

こちらにとってレミリアが参加しないことは好都合なのだ。

わざわざ訂正することはない。

したいならば、異変を終えた後にくればいいのだ。

夕霧は自分にそう言い聞かせた。

もっとも、大して頭にこないというのも言い返さない理由ではあるが。



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