東方夕刃録
◎[第十六話](1/4)
人間の中に長くいた者はそちらに引きずられる面もある訳だ。
一度眠り、川を越え、夜が明けはじめた頃。
夕霧は守矢神社に到着した。
途中河童に聞いた話では、東風谷早苗というものが巫女をやっているらしい。
ちょうど階段の掃除をしている緑色の髪の巫女に尋ねることにした。
「すまぬが、尋ね事をしていいだろうか?」
「ええ、構いませんよ」
「東風谷早苗というものを探している。ここの巫女だと聞いたのだが……」
「はぁ、東風谷早苗は私ですが……」
「む、これは失礼した。今日は願いがあってきたのだ」
「参拝ですか?」
「いや、祈願ではない。東風谷殿と二柱の神様への依頼に近い」
その瞬間に早苗の目が変わった。
「まぁだが、その前にお賽銭を入れていくことにしよう。今回のことの成功も祈ってな」
「へ?」
だが、勢いを削がれたように早苗が声を出した。
「む、幻想卿の巫女はお賽銭で喜ぶと思ったが、そうではないのか」
プレゼント作戦は失敗か、と一人ごちる夕霧。
「それはどこからの情報ですか?」
「博麗霊夢だが?」
「……まぁ祈願に来たものを無下に追い返すことはできません。境内まで案内します。ついてきてください」
同じ巫女として恥ずかしく思ったのか、聞かなかったことにした早苗。
先導して境内に案内することになった。
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