東方夕刃録
◎[第九話](1/6)
自らが望む結果を得るために争うものなり
夕霧は紅い館の近くにある大きな湖に来ていた。
目的は薬草摘み。
ここだけに生えるものがあると、永琳にお使いを頼まれたのだ。
集め終わったら、少し館を見ていこうと思っていた。
鈴仙には全力で止められたが。
だが、輝夜は笑ってみていて、夕霧はそれを見て、覗くだけならいいかと考えていた。
摘み終わり、一緒に来ていた兎に薬草を永琳のところまで持っていくように頼んだ後、紅い館に向かう。
兎には色々お小言みたいな(『うさうさ〜』としか言ってないので予想)ものをもらったが、せっかくここまで来たのだから、機会を逃す手はない。
と、いうわけで館の門の前まで来たのだが、
「なんだあれは」
珍獣を発見してしまった。
珍獣と言っても、別に獣やつちのこがいたわけではなく、立ったまま寝ているのだ。
鼻には鼻提灯を装備。
今どき鼻提灯など漫画の世界の空想だと思っていた。
一応門の前で立っているので、門番なのだろうか。
もしや、ある一定の距離に入ると目を覚まして襲い掛かってくるのか!? とゆっくり用心しながら距離を縮めてみるが、目の前に立っても起きる気配は全く無い。
なんとなく面白くなってきた夕霧はこれをしばらく観察してみることにした。
少年?観察中……
一時間が経過した。
肉体構造などの観察は隅から隅まで終わってしまい、手持ちぶさただ。
そんなときふと思った。
あの鼻提灯割ったらどうなるのだろう? と。
再び用心しながら目の前まで行き、そーっと鼻提灯を割った。
「ふわぁ!!」
「うお!」
縮地を用いて全力で離脱した夕霧。
あまりに周りが静かだったために、突然の耳元での大声にはさすがにビビッたのだ。
「何者です!侵入者ですか!」
と本来の仕事を思い出した門番。
「いや、涎垂れてんぞ」
との指摘にはっと気付いたように、袖で頬を拭った。
「侵入してないし、する気もない。どんなところか見に来ただけだしな。うむ、時間が余っているから話相手にでもなってくれないか?」
寝ているぐらいだから暇なのだろう?という問いは言葉にはしない。
「はぁ、まぁいいですけど」
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