東方夕刃録
◎[プロローグ](1/3)
刀は追われ、迷い込む
俺の名は夕霧。

名字はない。

ついでに言ってしまえば人間でもない。

付喪神。

それが俺の総称。

神といってもたいしたものじゃない。

有名な付喪神で言えば唐笠おばけとかもいる。

そういう奴らと俺は一緒だ。

百年の月日人に愛され続けたり、人を殺し続けたり。

とにかく思いが籠もっていればこの国では物に魂が宿るのだ。

ここしばらく安らぎは少なかった。

退魔士と呼ばれる存在がいるのだ。

幸いにして戦い方は知っていた。

そんじょそこらの退魔士や妖怪には負けない程度には強かった。

しかし、年月を同じ場所で重ねるたびに襲撃は増える。

場所を点々とせざるをえない。

ここもそろそろ出なくちゃいけない。

ここに来てから四年とちょっと。

長居してしまったが怪しまれはじめる頃だろう。

善くしてくれた人に挨拶をし、また宛ての無い旅に出た。

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