閑話(2/8)
「ねぇ、杞紗ちゃん。」
「?」
「彼との馴れ初め、聞いてもいい?」
洗い物が終わってすぐに、叔母さんは私の手を引き居間へ移動した。
おばあちゃんは眠たくなったのか自分の部屋へ行ってしまい、当然のごとく兄もその場には居なかった。こうきさんとふうくんはお風呂。
必然的に居間には私と叔母さんだけになる。
「・・・馴れ初めって」
「出会いは、彼の職場よね?杞紗ちゃんが前にバイトしてた会社なんでしょ?」
「そこまで知ってるの・・・。」
「お義母さんから根掘り葉掘り聞いたの。」
「・・・・・・」
「でも、やっぱり具体的に知りたくなっちゃって。・・・だから女子トークしましょ?」
にんまり笑顔を浮かべた叔母さんは、いつの間に用意していたのか
ティーカップに紅茶を注ぎ、机には持参したのであろうクッキーを既に並べ終えていた。
なんという早業だ。
女子トークって、私ももう女子と呼んでいいのか危うい年齢なんだが、ワクワクしている叔母さんの表情を見ると言葉には出せない。
目の前に出されたおやつに負けて、
一つそれを手に取った。
ゴクリ、喉がなる。
・・・・・・これ食べたらまたこうきさんに何か言われるんだろうな・・・・・・でも食べる。
パクリ、 ザクザクザク
バレなきゃいいという考えは、誰にでもあるよね。
「叔母さんの期待には応えられないと思うけど、それでもいいならどうぞ。」
「きゃー!じゃあじゃあ、昂樹さんの第一印象は?」
「うさんくさい」
「・・・え」
「うさんくさい」
あまりにも叔母さんがキョトン顔を晒すので、復唱してやった。
第一印象よ?と何度も問いかけてくる。
うんだから、うさんくさいだってば。
「こうきさん、昔は茶髪だったし、髪も遊ばせてたし、俗にいうチャラ男の風貌だったんだよ。」
「まぁ!きっとそのスタイルも似合ってたんでしょうねぇ、いいなぁ見てみたかったぁ。」
「・・・似合ってたけど、私は今の方が好き。」
ムカつくくらい整ったあの顔立ちには、黒髪の方が断然似合っている。(8割方私の好みだけど)
顔のバランスが左右対称の人はモテるとかいうけど、こうきさんを見て初めてその説はホントかもしれないと思った。
本人が興味を示さず、どれだけ愛想笑いだということがバレバレでも
その顔面で女も男も寄ってくるから不思議だ。
あ、男っていうのは横井さんみたいな構われたい属性の人ね。
「(ザクザクザク)だからこうきさん、初めてあった時も作り笑いしか浮かべない(もぐもぐ)、ある意味無愛想な人だったし、(ゴクンッ)特にこれといって接点もなかったよ。」
「あら、じゃあどうやって仲良くなったの?」
「うん、ある日私が嫌いな上司に大量に仕事押し付けられて先に帰られたのね。」
「ふむ」
「で、流石にブチ切れちゃって、その上司の机周りを荒らしまくってたら、止められた。」
「・・・・・・」
「仲良くなったのはそれがきっかけ。」
ペン立てにシュレッダーのゴミ詰め込んで、椅子の留め具を全部外して、パソコンのマウスを動かないように接着剤でくっつけようとしたら、
こうきさんに
『その辺にしときなさい。』
と、肩を掴んで制止させられたのだ。
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