実家なう(25/25)
「着いたら電話する。」
「杞紗ちゃんからよろしく。」
「おい、息子の電話も取れよ。」
「母親の電話無視するお前に言われたくない。」
「あの時は本当に申し訳ありませんでした。」
見合いの時のこと持ち出されたら頭上がんねぇ。
くそ、早く忘れろババア。
杞紗がお袋の激しい包容と頬ずりを済ませて俺の傍に戻ってくる。
また頭ボサボサになったね。
髪を手櫛でといてやり、お袋と兄貴にじゃあなと告げて車に乗りこんだ。
高速使えば、21時頃には家に着きそうだ。
「・・・・・・またすぐ来たいです。ちょっと寂しい。」
「・・・いつでも連れてきてやるから。そんな顔すんなって。」
「・・・・・・(コクン)」
よほど懐いたのか窓をあけてずっとお袋の方を見ている。
父親の悪事をバッサリどうでもいいと切り捨て、自分を可愛がり続けてくれるお袋に杞紗はすっかり気を許しきってしまったようだ。
・・・・・・これは同居の線もあながち冗談じゃないかもしれない。
お袋やオヤジより、杞紗がそう言い出しそうな雰囲気が出ている。
まってね杞紗ちゃん。
とりあえず早まるな。兄貴が結婚してから考えよう。ね?
「杞紗ちゃん!またすぐ会いに行くからね!!ほんとすぐに!!」
「ちよママ・・・!!」
「昂樹に嫌なことされたらアソコ蹴りあげてうちに逃げてきなさい!」
「致命的な急所言うのやめろ!孫に会えなくなってもいいのか!!」
「あ、それは嫌。じゃあ杞紗ちゃん、潰さない程度の攻撃で」
「そういう問題じゃない。そもそも攻撃をするな。」
何故帰り際までこうなのか。
杞紗はケラケラ笑っているが俺は全く笑えない。
窓を閉めてお袋と杞紗の間に壁を強制的に作ってやった。
ふっ、これでもう余計なことは言えまい。
「・・・杞紗」
「はい?」
車を発進させる前に、キスを一つ。
今から中々出来なくなるだろうから、充電充電。
・・・・・・よし、行こう。
お袋たちに手を軽くあげて再度別れの合図を示す。
それなのにお袋は杞紗にばっか手を振っている。
なんで分かるかって?目線がそっちにしかいってないからだよ。
クソババアの溺愛恐るべし。
・・・姿が見えなくってやっと二人だけの空間になった。
何か一気にホッとする。
「たまに杞紗の手撫でくりまわしたいから、片手はずっと空けといて。」
「・・・・・・なんて卑猥な言い回し・・・」
手を握りたいとかでいいじゃないですか。と俺の発言に呆れている。
ばっか、そんな表現じゃ足りないんだよ!
「揉んで、なぞって、絡めるから。」
「手なのにえっちく言わないでください!聞いてません!」
そうピシャリと言い放つ杞紗だったが、
結局家に着くまでの間片手はずっと俺のために空けてくれていた。
ほんとなにこのツンデレかわい。
p.191
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