初めて、なう(7/7)
「む、マカダミアナッツかクッキー&クリームか・・・悩む!」
コンビニなう。
そしてアイスコーナーで杞紗がうんうん言いながら真剣に悩んでる。
両方買うというリッチな選択はしないのか社会人。
「好きなだけ俺が買ってやるって」
「ほんとですか?じゃココからここまで」
そう言って杞紗が指さした範囲はハーゲン全種類分だった。
調子のんなよお前。
聞かなかったふりをして、「マカダミアとクッキー&クリームな」と二つのみカゴに入れた。
ブーブー言うんじゃないよ。コンビニでベロチューされたいのか。
「・・・・・・おや?」
杞紗が何かを発見したかのように、
目線をどこかに向けている。
「んー?どした?」
あ、牛乳なかったな。ついでに買っとこ。
牛乳パックをカゴに入れようと持った時、杞紗が「あの人、最近よく見るんです。」と言い出した。
・・・・・・なんだって?
「どれ?」
「あのパーカーきて、ニット帽被った人。」
そいつはコンビニの外、入口付近に立って中をチラチラ見ている。
用があるなら入ればいいのに、それをしないのはなぜだ。
「このコンビニ好きなんでしょうか。私が来る時いつも居ますよ。」
「・・・それはお前が来る前からいるの?それとも入った後に来るの?」
「んーさぁ・・・気がついたらいるんです。」
おいおいおい、それやべぇよ。
ストーカーじゃない?そうだよな?
そりゃ確かに杞紗は小さくて可愛いですけど
もう心身共に俺のものだから諦めろストーカー!
「コンビニ以外で見ることは?」
「あります。スーパーとか。本屋さんとか。あ、この間は最寄り駅でも見ました。家この辺何ですかね?」
「・・・・・・お前、しばらく単体行動禁止」
「え」
完全に黒じゃねぇか。
ていうかそこまで分かってて何で怪しまないの杞紗ちゃん。
そういうとこ危機感無さすぎるよ。冷や冷やする。
「仕事終わったら杞紗の会社まで迎えに行くから、待っててくれる?」
「そこまでしなくていいですよ。大袈裟すぎます。」
「ダメだ。何かあってからじゃ遅いんだぞ。」
「・・・・・・じゃあ会社近くの喫茶店で待ってます。マスターのおじさんと顔見知りだから、安全ですし。」
「わかった。明日からな?」
そう言うと、杞紗は笑顔で頷いた。
一緒に帰れるのが嬉しいのだとか。
そんな事で笑ってくれるなら、これからずっと迎えに行くわ。
杞紗の頭を撫でながら、
外にいるそいつを睨みつける。
丁度こちらを伺っていたのか、奴は慌てて顔をそらし、そして足早に去っていった。
・・・・・・これは村井とミヤビちゃんにも護衛を頼んだ方がいいかもしれない。
p.110
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