交際0日婚ですが何か?

入籍なう(2/10)







昨日も聞いたその台詞を
まさか母親の前でもう1度聞くとは思わなかった。
咄嗟のことに反応できない。
しかし傍らにいるお袋はキャーー!と嬉しそうに悲鳴をあげている。
自分の思う通りになって嬉しいってか!


「えっと・・・杞紗、お袋の言う事は気にしなくていいんだぞ?」

「いえ、もう逃げられないのなら覚悟を決めてしまいましょうマキさん」


え、男らしい。ちょっとときめいた。
いや俺が胸きゅんしてどうすんだ普通逆だろ。


「私、お母様の言うことは一理あるなと思ったんです。」

「?」

「友達の関係でも5年続いたってことは、考え方や性格の相性がいいっていうこと。考えてみたら私、異性の人とこんなに一緒にいたのも、気楽に自分を出せるのも、マキさんが初めてなんです。」


ニコリと笑ってそう話す杞紗に
胸がドキリとした。
あれ、なんか可愛く見える。
小動物的なものじゃなくて、女の子として。

確かに俺だって、異性とは恋愛でも長く続いたことはない。
女友達というのは結局恋愛に発展してしまって、いないも同然。
そんな中で杞紗は友人と言えど、5年間も一緒にいることができた。
俺だって嬉しかったのだ。こんなにも長い間恋愛抜きで異性といられると思わなかった。
杞紗となら1020年、どんな形でも一緒にいられると思った。
例え長い間会わなかったとしても、繋がりは切れないだろうとそう感じていた。

そうか、俺にとって結婚に大事なのは
長い時間を一緒に過ごせるかどうかか



「とはいえ、マキさんが嫌なら私は無理強いしません。結婚は大事なことです。考え方の相性だけではきっとダメなこともいっぱいあります。・・・ほら、私の家族のこともあるし」

「!」



悲しそうに目を伏せた杞紗が諦めたように笑う。
そんな顔するなよ。バカ野郎
全部知ってるからこそ、お前は俺を選んだんだろ?
知った上で、一緒にいたからお前は俺とならって思ってくれたんだろ?
じゃないと河上くんには言えないプロポーズを
俺に言えるはずがない。
そうだろう杞紗?


「・・・よし、結婚するか!」

「いいんですかマキさん!?」

「おう!男に二言はない!」


だから笑え!家族の事なんて、気にするな!
何てったって5年の間に、お前の事は知り尽くしてるんだから。
今更引いたりしないさ。
籍を入れてお前が楽になるならそうしよう。
それに俺も見合い地獄は真っ平御免だしな?










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