あの日の僕にさよならを…
§[その少年、憧憬](1/10)
ずっと君と生きていたい…
…勘弁してくれ…
…なんなんだよ…こいつらは…
…斎藤を組伏せたまま誰も寄せつけようとしない総司を、あの温厚な原田が怒鳴りつけている。。
斎藤が弱々しく原田に向かって手を伸ばし、起こしてくれ…と蚊の鳴くような声で懇願する。。
斎藤を放すんだっ。と原田に殴られても、総司は頑として動こうとしなかった…
異常なまでの執着…
このままじゃ、本気で斎藤が不埒な目に合わせれちまうぞ…
土方さんっ!見てねぇで何とかしろよっ!と原田の野郎、俺にまで怒鳴りやがった…
総司にがっちり抱え込まれても斎藤は抵抗すらせず、ぐったりと目を瞑ってしまった。。
…おい、それじゃ野獣の思うツボだぞ。
「…一君、そーゆー顔も凄く可愛い…」
土方さんっ!ホントにマズいぞっ!と原田が斎藤に覆い被さる総司を必死に剥がしに掛かる。
「…総司…離れるんだ…斎藤が苦しがってる…とにかく離れろ…」
俺とした事が…もう何を言っていいかも、わからなくなっちまってるわ…
…と、その瞬間、何かが走り込んで来た…
ドカッ!バキッ!
派手な音と共に総司が吹っ飛ばされて…
「…沖田…てめぇ、いい加減にしとけよ…」
涼が冷たい眼差しで総司を見下ろす。
蹴り飛ばされた頭を抱えて睨む総司に、涼は静かに言った。。
「…ホントに大切に思ってんなら、そんな風に出来ねぇハズだぞ。嫌われるように自分で仕向けてるだけじゃねぇか…ちゃんと言葉で伝えろよ。力で手に入れたって虚しさしか残んねぇんだぞ。」
総司が俯く…。
斎藤を腕に庇った原田が、涼を見つめて深く頷いた…俺は無言でいるしかなかった…
あんな目に合わされながらも総司を心配そうに見る斎藤…
「斎藤さん…あんたもだからな。沖田さんを誰よりも一番大事にしてんのは、あんたじゃんか。ちゃんと言葉に出してやんなよ。」
蹴っちゃってごめん、ほら早く立ちなよ、と総司の手を取り、涼は俺達を急かした。
「永倉さんと藤堂さんが早く飯食わせろって騒いでんだから、急いでよね!」
…そして、俺を一瞥すると「土方さんて、肝心なトコで役に立たないよね…」
…俺とおまえも、ちゃんと伝え合っとかねぇと駄目みてぇだなぁ?。
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