初恋、発恋中

○繋がり(1/7)









「あ…飲んでる!」

「目立った外傷もないしそのうち元気になるだろ。よかったな、ちっさいの」

「うん!ありがとな!でかいの!」

猫がミルクを飲んでいる様子を見て、嬉しそうに笑う真司と風呂あがり姿の高谷。

あのあと、結局猫を持ち帰ってきてしまった。俺達のじゃなく…高谷の家に。

高谷が風呂で洗ったおかげで、白猫はすっかりフワフワで綺麗になっていた。

明日には今降ってる雨が止むだろうし、猫も体力が戻るんじゃねぇかな。

そうしたら、また元の場所に猫を戻さないと。っし…それは俺がしよう。

こんだけ見た目が綺麗になってれば、きっと誰か良い奴がみつけて拾って…って。

俺もこの猫を捨てた奴と同じだな。

…でも、俺の家で飼えるわけねぇ。

俺らが家にいない間に、あの女に猫の存在が見つからないとも限らない。

見つかったら間違いなく猫は殺される。

ギシッ

ソファに座って考え事をしていた俺の隣に、高谷が腰掛けてきた。

「藍、お茶でいいか?」

「あ…さんきゅ」

受け取ったグラスのふちに口をつけ、一気に中身を飲み干す。

「あー…っと、あの、さ」

空になったグラスを握り締める。 

すげー言いにくいけど、この猫は飼えないって…いま、言わねぇと。

「高谷、マジで俺の家は…」

「ん?あぁ、だから俺ん家に連れてきたんだろ。お前が飼えないなら俺が飼う」

「え?」

その発想はなかった。

「や、でも…」

「いいんだよ。前々から猫飼いてぇなって思ってたから。俺の兄貴が猫好きだし、詳しい世話の仕方は兄貴に聞く」

高谷、兄ちゃんがいたのか。…じゃない。いまはそんなことどうでもいいだろ俺。

そうじゃなくて…

「マジで、いいの?」

「あぁ。猫は俺が飼う。…それより、今日はもう遅いから泊まってけ。布団敷いておくから2人で風呂入ってこい」

猫を飼ってくれる上に、ただの部活の知り合いとその弟を家に泊まらせてくれるって。

どこまで良い奴なんだよ、コイツ。






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