難攻不落の水瀬くん。
[体育祭の賭け事。](1/17)
心なしか…水瀬の顔が緩んでいる。
「ほら、東。言ってみて?」
言ってみて、と言われても…
「わかんない…」
「ん?」
「なんでぎゅってしたのか、わからない。…なんか、したくなったっていうか…」
「…やばい。」
「え、」
「俺が今、すごい東のことぎゅってしたい。」
「え、ちょ、まっ」
ピピッピピッ…
水瀬が私に抱きつこうとした瞬間、バスが到着。
私は水瀬を押して、バスに乗り込んだ。
「あー…残念…」
「うるさい。」
水瀬はむっとした顔でバスの外を眺める。
それが様になるもんだから、ちょっと悔しい。
左手の水瀬の指を見ると、さっきよりも紫色感がアップしている。
「…どれくらい痛い?」
「触ると激痛。」
「…よく無表情でいられるね。」
「痛い顔しても痛いままだから。」
「でも、痛いって言った方が痛さが溜まらないよ。」
「…痛い。」
そうちょっぴり呟いた水瀬は、小さい子供みたいで可愛かった。
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