難攻不落の水瀬くん。

[体育祭の賭け事。](1/17)


心なしか水瀬の顔が緩んでいる。



「ほら、東。言ってみて?」



言ってみて、と言われても


「わかんない

「ん?」

「なんでぎゅってしたのか、わからない。なんか、したくなったっていうか


やばい。」


「え、」


「俺が今、すごい東のことぎゅってしたい。」


「え、ちょ、まっ」


ピピッピピッ



水瀬が私に抱きつこうとした瞬間、バスが到着。


私は水瀬を押して、バスに乗り込んだ。





「あー残念


「うるさい。」



水瀬はむっとした顔でバスの外を眺める。


それが様になるもんだから、ちょっと悔しい。



左手の水瀬の指を見ると、さっきよりも紫色感がアップしている。



どれくらい痛い?」


「触ると激痛。」


よく無表情でいられるね。」


「痛い顔しても痛いままだから。」


「でも、痛いって言った方が痛さが溜まらないよ。」


痛い。」



そうちょっぴり呟いた水瀬は、小さい子供みたいで可愛かった。







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