布:外章
[『Be starving』](1/6)
雨。
高層ビルの、高層階。
オフィスに隣接してあるレストラン。
窓越しに、濡れる街景色を見つめる女性が二人。誠至と芽紅。
ウエイトレスが、コーヒーを運んでくる。
暫く、コーヒーカップが皿に擦れる音だけになった。雨の音は聞こえない。
「なかなか、いいとこだな」
「特殊な会社柄だからよ」
「エージェントって言ってたか」
「そう。平たく言うと、人材派遣会社。ただ、ウチは軍人とか犯罪者とかも派遣できるタイプね」
カップを口にまで持っていったメグの動作が、止まった。
「あら。高校生には刺激が強すぎた?」
メグの手が再び動き始める。カップを皿に戻す。
「いや、疑問が解けただけだ」
メグが、皿ごとコーヒーカップを机から払った。
カップと皿が、音を立てて地面に落ちる。
割れた。
ウエイトレスとバリスタらしき人物が、すぐに歩いてくる。
バリスタに、メグが少し話しかける。
バリスタが、うなずいて立ち去った。
「なんて言ったの?」
「『うまかった。紙コップで淹れろ』ってだけ」
しばらくして、紙コップが二つ運ばれてきた。
「…なにこれ。さっきよりも遥かに美味しい」
「たぶん荒っぽいことをしてた人間だろう。だったら、コーヒーも荒っぽく淹れた方が上手いし美味い」
メグが、飲み終わった紙コップを掌で潰した。
「軍人とか犯罪者とかも派遣できるタイプなんだろ?」
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