ピアス
[消えない痕](1/25)
*
猛暑がつづく真夏だった。
セミが窓の外で煩く鳴いているのが聞こえていた。
私達は気がついたら高校生になっていて、いつのまにかもう高2の夏だった。
まーちゃんは県外の高校に入学して、こっちに帰ってくるのは夏休みか、冬休みだけだ。
透は、ここからそう遠くない公立校で、私は知っている人が誰もいない女子高にひっそりと入学した。
クーラーの効いていない部屋で電気もつけずにベッドに腰かけたまま見つめあっていた。
水分のないかさついた唇に、自分の唇を押し付ける。
ざらりとした感触がして、ちょっとだけ下唇を舐めてみたらビクッと肩が揺れた。
「……」
しばらくしてゆっくりと顔を離した。
汗ばんだ体で互いに密着するような格好になって、すごい熱かった。
汗が首から流れ落ちる。
「………いいよ、透。」
そう言って、透の首に手を回して引き寄せた。おずおずと、ぎこちなく透の手が私の体を這う。
普段は絶対こんなこと自分からすることなんてできない。
でも、全てこの熱さのせいにして私の汚い思いも全部なかったことにしてしまいたかった。
そう、私は透と付き合っていた。
高校に入って、すぐの高1の夏休みから付き合っていることになるから、付き合いだして今年で1年になった。
- 26 -
前n[*]|[#]次n
⇒しおり挿入
⇒作品レビュー
⇒モバスペBook
[編集]
[←戻る]