ワールドエンド









一万回あの呪文を読み上げるというのは予想外に大変だった。呪文は坊さんのお経より全然短いというのに何このダルさ。



俺は雨の日も風の日も台風の日も山田さんちで呪文を唱え続けた。これならまだ蔵に閉じこもってた時の方が楽だと思った。



山田さんがホラー映画見てても俺はひたすら唱える。山田さんが西洋の黒魔術を実践していようが俺はひたすら唱える。



そんな苦労が遂に身を結んだのが唱え初めて約1ヶ月後に変化が起こる。いつも通りに俺が呪文を読み上げている時だった。



「ジャスティン…アレ?」



殻の表面に無数のヒビが入っている。込み上げる嬉しさに涙で前が霞んだ。そうだ、ついにセクシー妖精ちゃんとご対面なんだ!


「頑張れ…頑張るんだ!」


だんだんと殻のヒビが大きくなり腕が突き出た。ソレは光のベールに包まれているようでぼんやりとして見える。続いて足、頭と順調に殻を突き破る。


そして残りあと少しの所で眩い閃光が走り思わず俺は目を瞑る。直後、何かがはじけるような音がした。



「おお俺の妖精ちゃああああん!」



俺はまだ光の残存を目に残しながらも飼育箱に張り付くようにして中を除く。そして目を疑った。



なんと中には背中に薄く綺麗な羽を生やした小さなオッサンの姿があった。



「アナタが育ててくれたんですか?」

「え、あ、うん」

「有難うございます」



気持ち悪いから微笑むな。



その妖精(とは呼びたくないが分類上は妖精)は顔面は脂テカテカで体型も今はやりメタボですね毛腕毛ともに濃く…



とりあえずオッサンだった。




「お前なんなの?妖精とかいったら瞬殺だからね」

「はうう、まさにソレなんですが」


はうう、って…貴様萌を愚弄するのもそこまでにしておけ。俺が許さん。



「たっだいま―」



ナイスタイミングでコンビニに行ってた山田さん帰宅。脱出で玄関まで行くと事情を話す。山田さん爆笑。


「うわ―超おもろいね!」

「お前にやるから」

「言い忘れてたけどその妖精最初に見た人に一生付き添うって書いてあったよ」

「そうです。あなたが死ぬまで僕はそばにいます」



そうか、なら俺飛び降りようかな。



山田さんの笑い声とオッサンの羽音が渦巻くなか、俺は静かに絶望の海へと飲み込まれていった。






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