絶対に手に入らない彼 で あ い(1/4)




ー 運命が変わる音を、あなたは聞いたことがあるだろうか。


同僚にさそわれたハロウィンパーティ。
あの日、渋谷では、日常生活の疲れを振り払うように、仮装に身を扮した若者たちで賑わっていた。いや、若者だけではない。何を思ったのか、ビキニの40代前半の女性もいる。神崎サラは、それを見て ため息をついた。

人混みは苦手だった。家で、切れ長の目が特徴的な人気俳優の月9ドラマの録画を見ながら、ビールでも飲んでいたかった。

だがしかし、女性の社会というのは複雑で、それでいて脆い。ひとつの誘いを断っただけで、永遠に仲間に入れてもらえないことなんて、ザラだ。先月 開催された女子会に、恋人とのデートが理由で 欠席した石川さんは、この一ヶ月、一人で弁当を食べている。
わたしは、今後の「厄介」よりも、目先の「厄介」を選んだのだった。

この日も、神崎サラは、いつも通り 顔にべったりと愛想笑いを貼り付けて、ときには相槌を打ち、1日をやりすごすつもりだった。

慣れた作業。苦痛ですらなく、何の感情も湧かない。想定外のことは起こらず、安定した、夜の海のような世界。神崎サラは、同僚と喧騒とした渋谷の街を出歩いているにも関わらず、静寂の中にいた。





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