勝手に宣伝する男
[ワンダーコア編](1/1)
[勝手に宣伝シリーズその4 腹筋マシン ワンダーコア]
たかしは、ビルの屋上で冷たい風に吹かれていた。これから自分がぶつかる地面を見つめまくっていた。こんなに、見つめるかねぇ、ってぐらい見つめていた。
「俺は、もう、峠を過ぎたプロボクサー。ボクシングも終わりだ。他の仕事もできねえ。死のう」
その時、背後から声がした。
「死ぬのをやめろ!」
「なんだ!お前は!関係ないだろ!俺は死ぬんだ。こないだ、ジムに入ってきた若いボクサーにスパーリングで負けたんだ。40歳の俺はもう終わりだ」
「あきらめるな!夢はかなう!」
「かなうもんか!俺はその若い入りたてのボクサーに強さの秘密を聞いたんだ!そしたら、呆れたよ!俺のころは、あんなものなかった!強さの秘密はワンダーコアだってさ!」
「な、なんだって、ワンダーコア?」
「そうさ!俺のやっていた腹筋運動は、背中や首に負担がかかるつらいものだった。試合当日は、背中や首が痛くて痛くて仕方なかった!」
「で…でも、死ぬのは、やめろ。ワンダーコアがいい商品なのはわかる。でも、頑張れ!」
「お前に、俺の気持ちなんてわからない!体を倒す時も起こす時も常に腹筋を刺激し、上下両方向の動きで腹筋も背筋も鍛えられるデュアルレジスタンスシステムがなかった哀れなボクサーの気持ちなんてな!」
「そ、その、デュアルレジスタンスシステムがない分、努力で補えばいいじゃないか!」
「努力で補おうと思っていたさ。しかしな、180°以上体をそらすことができるフルレンジモーションを搭載しているので、コア全体を限界まで収縮できて、これにより、床での腹筋運動よりもはるかに広範囲の筋肉を鍛えられる180°フルレンジモーションがあるやつばかりが、世界タイトルの切符を手にする、今のボクシング業界の汚さに、俺は耐えられなくなったんだ!こんなの不公平じゃねえか!」
「で…でも、死ぬのは、やめろ。ワンダーコアがいい商品なのはわかる。でも、頑張れ!」
「頑張れだと?頑張らなくていい腹筋運動をしてるボクサーたちがどんどん、世界チャンピオンになってるのに、なぜ俺だけ頑張らないといけない?」
「わ、ワンダーコアがあったとしても、そ、そりゃ、他のつらいこともあるさ!ワンダーコアを持ってるボクサーも!」
「たとえばなんだよ?」
「た、た、たとえば、それは、その、あの、あれだよ…。目的に合わせた腹筋運動がワンダーコアでは、で、できなかったりするとかさぁ」
「ワンダーコアならな!目的にあわせて選べる腹筋運動が6種類できる!これさえあれば、自宅にジムがあるようなものなんだ!俺のボクサーとしてのピークのころは、ワンダーコアはなかったんだ!」
「じゃあ死ぬしかないな。死ね!」
老紳士が背中を蹴り飛ばすと、老いぼれたボクサー、たかしは真っ逆さまに転落していった。
ワンダーコアで鍛えられていない腹筋は地面にぶつかり、ペチャアッと音がした。ワンダーコアで鍛えられている腹筋なら、死にはしなかっただろう。
「ワンダーコアがなかったら、そりゃ、世界チャンピオンなんか、なれないよね(笑)。自殺をとめた俺が間違っていたよ。ワンダーコアか、こいつぁ、いいことを聞いた!憧れのシックスパックの腹筋、夏までに手に入れるぞー!」
今回の商品
ワンダーコア
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