平成ラプソディー
[京の都と血筋](1/11)


 新幹線は、桜の花びらを蹴散らすように、冷たい北風が吹き荒れていたホームに滑り込んで静かに停車した。

 五年ぶりの京都。改札口付近は桜の季節恒例の混雑さで相変わらずだなと思ってしまう。

 仕事で東京に行ってから私はすっかり標準語になっていた。だから旅行で来ているように、キャスター付トランクを立ててすまして立っていた。

 そうして何気なく通りすぎる人をウォッチングする。

 ふと着物を着た背の低いお婆さんに気をとられる。背筋をピンと伸ばしてスタスタと歩く姿が五年前に亡くなった祖母によく似ていた。

 祖母は公家の血筋だった、と父から聞かされたのはいつの頃だったろう。いつかは思い出せないが、それを聞いて勝手に浮かれた自分のことは覚えている。

 公家ということは、自分の中に雅な血が流れているということだ。

 けれど調べてみると、公家といっても明治になってから没落していった家の方が多かったらしいことも分かった。祖母の旧姓は、その中の一つにあった。

 それを知ってから、自分には雅な血が流れていることを忘れることにした。

 親戚たちもそんな話をしたことがない。きっと公家なんて名ばかりで苦労した時代があったようだし、むしろ忘れたい過去に違いない。

 固執しているのは父だけだ。父は強欲なのだろうか。それともお酒が入ると夢の世界を飛び回り、自分を平安の時代にでも飛ばしているただの歴史好きなのだろうか。

 





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