其れは突としてこの胸を駆ける
[胡蝶之夢](1/21)




***




「──…もう、泣くな」



そう言って涙を拭う指先が、頬に触れたその瞬間。



身体の芯を突き抜けて駆ける想いが本能を、たった一瞬で──揺さぶり、火照らせ、焦れさせた。



近づきたい。



鼓動が聞こえるくらい、近いところまで。



声が聞きたい。



耳の奥が甘く痺れるくらい、すぐ側で。



そして何より──



もっと深くで触れ合いたい。



溶けて溶かして、貪り合って。



隙間なんてなくなるくらい、ただひたすらあなただけを求めたい。



──なぜならば



あなたと出逢ったその時に、もうこうなる事は決まっていたから。



抗えない。



流される。



自制も予測もできない感情。



だけどきっと、これこそが──…




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