タッタッタッーー。
男は女と走っていた。
何かから逃げるように。
ハァハァハァ
息もあがっていた。
ーーこの辺りでいいかーー
そこは崖だった。
男と女は心中を図ろうとしていた。
『せーーーのっ』
男は訪れるであろう衝撃にぎゅっと目を積むって備えた。
...だがいつまでたってもその衝撃は訪れない。
恐る恐る目をそっと開けてみる。
木の枝に体が引っ掛かっているのだとわかった。
崖下には頭から落ちて死んだ彼女がいた。
男は急に怖くなり、
一目散にその場から逃げ出した。
震えが止まらなかった。
逃げて、逃げて、逃げて。
灯りが見えた。
民宿だった。
「お願いしますっ 一晩泊めていただけませんか。」
男は一番奥の部屋に案内された。
「すみませんねぇ、少し古いんですが...どうぞごゆっくり。」