暇なときに読む話
[民宿](1/3)


タッタッタッーー。

男は女と走っていた。
何かから逃げるように。

ハァハァハァ
息もあがっていた。

ーーこの辺りでいいかーー

そこは崖だった。
男と女は心中を図ろうとしていた。

『せーーーのっ』

男は訪れるであろう衝撃にぎゅっと目を積むって備えた。

...だがいつまでたってもその衝撃は訪れない。

恐る恐る目をそっと開けてみる。
木の枝に体が引っ掛かっているのだとわかった。

崖下には頭から落ちて死んだ彼女がいた。

男は急に怖くなり、
一目散にその場から逃げ出した。

震えが止まらなかった。

逃げて、逃げて、逃げて。

灯りが見えた。
民宿だった。

「お願いしますっ 一晩泊めていただけませんか。」

男は一番奥の部屋に案内された。

「すみませんねぇ、少し古いんですが...どうぞごゆっくり。」




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