暗い穴
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打ち合わせが終わり、帰り仕度をしている友梨香に腹巻が声をかけた

「お疲れ様です。さっきはすみませんでした。
嫌な思いさせてしまって。」



「あ、いえ。気にしてません。」



気にしていないというのは本当だった


むしろ腹巻が助けてくれた事が嬉しく、
気分は良い方だ


(それにちょっと格好良かった)


内心ドキドキしていた




「またすぐ来週打ち合わせですけど、

今日こんな事もあったし、

心配だから連絡先交換しませんか。

何かあった時、自分ならすぐ対応出来ますから。」



真剣にまっすぐ友梨香を見つめる腹巻



ここまで言われてはさすがに交換しないとは言えない


邪魔してくるような人も今はいない



ならば…



と、友梨香は腹巻と連絡先を交換することにした




一番頼りたいはずの翔平には頼ることが出来ない

今頼りになるのは腹巻だった



そして、今日の夜翔平と話し合わなければならないことを思い出す



それが顔に出ていたようで
腹巻は心配そうに友梨香の顔を覗いた



「どうしました?まさか、今日さっきのが初めてではなかったとか?」



「いえ!違うんです!ちょっと他のことで悩んでて…」


そう言い俯くと上から腹巻の優しい声がふってくる



「良かったら少しだけ話しませんか?」




「え?あ、はい。」




言って良いものか、言ったところでどうにかなるのか、
自分がどうなりたいのか


多少の迷いはあったが
その時の友梨香は


ただ話を聞いて欲しい


今自分はとても辛い、シンドイ思いをしている



というのを誰かに話したかったのだった




義母に少し遅くなるという連絡を入れると
クラスに長男を迎えに行く



子供の体力というのは無限でまだまだ遊び足りないようだった



園庭で腹巻の娘と一緒に遊び始める



その様子を見ながら腹巻に翔平の不倫の事を
少しずつ話し始めた







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