かすかな望みが叶う頃
[2 予定外の人物(1)](1/1)
 誰もがフランスになごりおしさを感じながら出港の時を迎えた。
 敵国の海域を通る為、昼間は潜航しての航海、夜は浮上しての航海となる。出港は一八○○時となっていた。夜だというのに出航に合わせ、ドイツ海軍は軍楽隊まで用意してくれていた。 互いの武運を祈りながら伊五二はロリアンの軍港をあとにした。
 出港時、潜水艦内は多忙である。積み込んだ食料などの整理にあけくれるからである。 
「スマン、また便所に行ってきていいか?」
 中村二水は食料の整理の手をとめ言った。
「大丈夫か。顔色がよくないぞ。」
 一緒に作業している野原二水が言葉を返す。
「フランスの食事があわなかったらしい。それにさっき便所に行った時は先客がいてさ。」
「わかった。ここは俺がやっとくから…一発発射してこい。」
 中村二水は苦笑いを浮かべながら「スマン」と言い便所にむかった。

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