かすかな望みが叶う頃
[1 伊五二に忍び寄る影(1)](1/1)
 艦内には戦争を忘れさせてくれる位の静けさに包まれていた。ここドイツ占領下、フランスのロリアン軍港に一万五千海里を航海してきた大日本帝国海軍の伊五二が停泊していた。
 この艦をめざして一人の少女が忍び込んでいた。何隻も停泊している中で捜し求めている艦を見つけるのは困難であった。少女にドイツ海軍Uボートと帝国海軍の伊号潜水艦の見分けがつく訳がないのである。警備兵に見つかりそうになりながらも少女はようやく一隻の艦が他の艦と違う事に気付いた。その艦は見た事のない旗をかかげていたのである。そう、旭日旗であった。その瞬間、少女の興奮は頂点に達し、何度も息を飲み込むようなしくざをくり返しながら、その艦に独り乗り込んだのであった。

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