楽園の探求者
[2、神の導き](1/4)
〈大地の一族〉は鳥葬の準備を始めた。
鳥葬とは死体をハゲワシに喰らわせる葬儀の一種である。
〈大地の一族〉は大地を神聖な神の身体と考え、埋葬することは神の身体を穢すことになると考えているのだ。
人間の死体はなかった。
あるのは、トゥダランの連れてきた三つの目を持つ狼の殺された牛や馬の死体だった。
ハゲワシがつんざく鳴き声を上げながら空を回っていた。
〈大地の一族〉は聖句を唱え、黙祷を捧げると、その場を後にした。
ハゲタカが自分の上で飛んでいる。
その邪悪さのために大地を立つことを許されなかった〈天の邪神〉の使いであるハゲタカは、〈大地の一族〉が楽園へ行くのを妨害し、魂をも喰らうという。
天の神が邪悪だとされる由縁である。
本当に彼らは〈天の邪神〉の使いなのだろうか?
彼らはただ単に生きるためだけに喰らっているのではないだろうか?
そんな単純なことですら考えたことがなかった。
セルーナはトゥダランの襲撃があってから、何も信じられなくなっていた。
〈大地の一族〉の馬の足取りは重かった。
「我らはまだ罪を清められていないから、この世界で旅を続ける運命にあるのだろう」
違う。
輪の先が楽園であるはずがない。
皆も分かっているはずだ。
セルーナは自らの考えを言った。
「あんなところ、楽園なはずがないわ」
〈大地の一族〉の人々は白い目でセルーナを見た。
「セルーナ、神の意図は人間を超越して分からない。そなたはまだ十七であろう。この大地と同時に生まれた神の考えが理解出来るものか。神の怒りに触れるぞ。〈楽園の主〉は我々が最も恐れるトゥダランに姿を変えることによって、我らの信仰心を試したのだ。レグイットのような試練を超えた者は楽園へ行くことが出来た。そして恐怖心に負けた者は、旅を続けることを課せられたのだ」
〈大地の一族〉はセルーナを非難すると、再び砂漠の向こう側へ向けて馬を歩ませた。
セルーナは仲間の言葉に疑問を抱いた。
彼らの言葉が真実だとしたら、なぜ神は自分たちを試す必要があったのだろう?
それも、あんな残酷な方法で。
同じ道を歩んできた者を世界の隔たりで引き裂き、大地の産物である牛や馬を殺してまで、あんな怪物を引き連れてまで、信仰心を試す必要がどこにあったのだ。
大地の広い心は全ての人々を受け容れるはずではないのか?
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