医学部をやめた
[疑心](1/4)



「えっと、その」
「食べないの?」
「いや……、小林が作ったの?弁当」

話題を逸らした。
逸れているかはわからないけど
昼休みをこのまま無言で過ごすのも気まずい。


「うん、家族分毎日作ってる。
結構得意だよ」
「おいしそう」
「江川のそれよりは栄養あるしね」
「確かに」


ムカつくと言っていたし刺があるが、円滑にコミュニケーションはとれそうだ。
拒絶の言葉ではなかったと捉えよう。


……学校が終わったらバイト?」
「そう。開店には間に合わないから迷惑かけてるし急いで帰る」
「それで朝は弁当を?」
「そ」
「忙しいんだな……
「あんたとは違ってね」
…………、そうだね」

認めざるを得ない。

バイトも家事も、僕はやっていないから。

有り余っている時間の中、勉強をひたすらしているだけだ。


「勉強、困っていたら教えるよ」
「え」

目を丸くした。
それから、頭を抱えた。

「何?同情?」
「そうじゃなくて……
「何」
「えっと、その、ほら、
小林がすごく頑張っていて、僕のことも心配してくれて、良い人だから、成功して欲しくて、
その、応援できるならしたいから」


それは
搾取とは違うと思うから。


……小林と小林を利用した人は違う。
僕は勉強しかできないけど、だから勉強で助けたいなって……


必死に笑ってみたが、睨みつけられた。
やっぱり何か間違っていたかな。


「それじゃあ私が勉強教えるの嫌になったの心が狭いみたいじゃん」
「だからそれは違うって……

「それに私からできることないし」
「何もなくていいのだけど……
「あ、弁当作ろうか」
「え?」
「その代わり、統計学教えて。
この前テスト落ちた。2回」
「あ、ああ、良いけど、
……それより弁当って言った?」
「それくらいしかできないし。
不味くはないと思うよ」


ということで
出会って二日の女性に弁当を作ってもらうことになった。

もちろん人生初の体験だ。

ちなみにその本人からムカつかれているところが、少し奇妙な話だ。


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