医学部をやめた
[3歩進んで2歩下がる](1/4)



『今日はお疲れ様!
スクーリング被ってるコマあったらよろしく!
ってか何受けるかお互い見せ合おうよ!
いいかな?嫌だったら良いんだよ!
本当は今日参加しようか悩んでたんだけどケントに会えたし参加して良かった〜
今度一緒に遊ばない?
ケント実家関東だっけ?
ちょっと東海まで来るの大変かな?
アレなら自分がそっち行くのもいいな
まだ人前に出るのは気が引けるけど、少しずつ社会適応の練習したいしケントと遊びたいし
今度空いてる日とか』


見たことない文字数のラインが来ていた。

2行目あたりで心が折れて閉じた。
ブロックしたい。


見事福谷の策略にハマった僕は
人生の汚点を晒すことで「秘密を知ってる特別な友達」というポジションを奴に許してしまった。


できれば二度と関わりたくない。

家に帰っても、あの鼻息とキツい体臭と不潔な身体が頭から抜けない。

性格だって厳しかった。

言ったら悪いがアレはいじめられても文句は言えなかろう……というかいじめをした人達の気持ちがわかる。


スマホが震えて
持ち上げて見ると、


『急に長文ごめん!キモいよね笑
返事、無理だったらいいよ!
ケントが返せそうだったら返せるときに適当に返して!』


電源を切った。


なんだろうこのコイツから溢れ出る
「心に傷を負ってる可哀想な人に優しくしてあげてる」感じ。

素直に腹が立つ。

まだ僕の方がまともな人生送ってきたと思うんだけど。

僕の方がずっと


…………


いや

僕の方が多くの時間と金を無駄にした。


福谷は引きこもりから社会復帰しようと前進しているが

僕は大学生医学部から引きこもりに後退している。


ああ

僕はあの福谷以下の存在なのか。



笑えてきて泣けてきて
何度も頭を壁に叩きつけた。




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