不思議な話
[握手](1/2)
私が子どもの頃の話。
お正月だったか、お盆だったか、母の一回り歳上の伯父の家を尋ねた。
伯父は患っており、会うたびにどんどん痩せていた。
私がもっと小さい頃には、祖父の家に遊びに来ている私と妹に
「おじちゃんちに行こう」
と声を掛ける元気な姿が記憶にあるが。
伯父の娘たち、つまり従姉は私より一回り上で、遊ぶには歳が離れすぎていて、毎回お茶を飲んだら帰るような、そんな感じだった。
話は始めに戻り、お正月だったか、お盆だったか、の帰り際。
伯父が妹に
「握手しよう」
と言い、妹は床に臥せたままの伯父と握手をした。
次、私が呼ばれ、私も握手を交わした。伯父は病に臥せている人とは思えないくらい、私の手をしっかりと握った。
自宅に帰り、妹が母に伯父の家でのことを話した。
「そんなこと言ったの?
今までそんなこと、したことないのに」
母は何か悟った風だった。
結局、伯父に会ったのはその日が最後になってしまった。
母は『もう会えないとわかってたから、握手したんだろうね』としみじみ言った。
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