不思議な話
[壁から](1/1)
 社会人1年目のこと。

 ある昼下がり、当時の彼の部屋で一人寝ていた。
 
 ベッドは北側の壁にくっつけて置いてあり、私は東側に頭を向けて仰向けに寝ていた。

 目が覚めそうで覚めないそんな時。

 私の右側、つまり、北側の壁から、浴衣姿のおじちゃんが次々出てきては私の左の方へ行く。何やら話しながら。

 目は閉じているのに、浴衣姿のおじちゃんが、次々壁から出てきては私の左の方へ行くのが見える。

 “霊道”だー

 なぜかそう思ったが、特に怖いとも思わず、そのまま私は睡眠を貪った。

 それから暫くして、彼にその話をしたら、

 「この部屋、時々おかしいことがあるよ。
夜中テレビをつけたら、死体が映ってたことがあるし」

 「やだ止めて!」

 怖くて話を止めてもらったから、その話はそれ以上聞いていない。

 「大体、普通、部屋番号に“4”なんてつけないよね」
  
 彼の部屋は404号室だった。

 その後、彼はそのアパートを出、そのあと私たちは別れたので、それ以降のことはわからない。

 彼は模様替えが好きで、ベッドの配置を時々変えていたけど、そんな体験をしたのは、ベッドの位置が北側、頭を東側に向けて寝たその時だけだった。

 1、2階にテナント、3、4 階が居住スペースになっているそのビルは、今も存在している。

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