[暗の色](1/8) 「七緒さん、申し訳ないのですが教材室から次の授業で使う資料を持ってきてもらっても良いですか?」 廊下で偶然会った天羽先生にそう言われ、教材室へと向かった。 教材室の前に着くと、中から複数の声が聞こえてきた。 「七緒さんとは付き合えないよ」 「・・・そうかもな」 「なら、もうあたしにしなよ」 「・・・それも良いかもしれないな」 この声、千広君と森崎さん? 何で二人が教材室に? 気になって扉に手を掛ける。 扉を開けて中を覗くと、信じられない光景が目に入った。 千広君は、森崎さんの背中に腕を回し、二人の間に隙間がないくらいに密着し合っている。 「な、んで・・・」 森崎さんも千広君の胸に顔を埋〈うず〉めて、千広君に応えるように抱き締めている。 ぐらっと視界が揺らぐ。 やめて・・・やめて。千広君に触らないで。 瞬時、森崎さんと目が合った。 その目は笑っていて、微かに口が動き出す。 『ざ』 『ま』 『あ』 『み』 『ろ』 「っ・・・」 あたしは、その場を逃げ出した―― ⇒作品?レビュー ⇒モバスペ?Book? [編集] *戻る* |