シロ王子クロ王子
[哀の色](1/15)

 律君は今頃彼女と楽しんでいるのだろうか。


 想像するだけで胸が痛い。


 律君にも千広君にも、あたしは深く関わり過ぎたんだ。


 だから律君に彼女がいたことも千広君の口からそれを言われたことも苦しくて胸が痛いんだ。


 深く関わらなければこんなに痛むこともなかった。


 律君と千広君に出会う前に戻りたい。そしたらその時のあたしに2人とは関わっちゃ駄目だよって言えたのに。苦しむのは自分だよって教えてあげられる。


 けれど、どう足掻いても時を戻すことは出来ないし、過去に行くことは出来ない。


「のーちゃん?」


 ふと聞き覚えのある声に視線だけを上げた。


「泣いてるの?」

「梓・・・」


 脇に分厚いファイルを挟んでいるところを見ると、彼はこの色鴇祭の最中でも生徒会の仕事をしていることが分かる。


「へぇ、あののーちゃんが泣いてるとはね」


 ポロポロと落ちてくる涙を見て笑っている梓。


 こんな時に会いたくなかった。


「慰めてほしい?」

「いらない。放っておいて」

「元彼に泣かされたの?」


 相変わらずズカズカと人の心に入ってくる。


 昔っからそうだ。放っておいてほしいのにこいつは離れるどころか近付いてくる。


 迷惑なのに。


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