[音の色](1/29) 目を覚ますと、昨日の体の怠さは微塵もなく熱も下がっていた。 むしろ、昨日の夕食と言えるものは果物だけだったからか空腹に満ちている。 「ん・・・」 横にいるあたしよりも大分体温が低い彼が寝返りを打つ。 長い睫毛にかかる細くて綺麗な髪と、それに似合う端正な顔。 それこそ寝顔は王子様。 あたしを包むように腕を伸ばしてきた彼を見て、昨日の出来事を思い出した。 「本当に眠れたんだ・・・」 家族以外の人と眠れたのは初めてで、あんなに毛嫌いしていた彼とこうして一夜を過ごすとは思いもしなかった。 ――確実に状況は変わってきている。 けれど、今はもうあたしと彼は恋人ではなくお友達。 「のの・・・?」 「あ、起きた? おはよう」 「ん、はよ」 寝起きでいつものような迫力はないものの、そんな状態でも美しい千広君が本当に羨ましい。 王子様のお目覚めは、とても優雅なものだった。 「体調は?」 「もうスッキリ。熱も下がったみたいだし」 「ん」 念のため、とあたしの前髪を掻き分けて額に掌を当てて熱を確認する千広君。 熱がないと分かると、「大丈夫そうだな」と呟いた。 ⇒作品レビュー ⇒モバスペBook [編集] *戻る* |