[声の色](1/15) その声は余りにも弱々しくて。その声だけを聞けば今にも崩れ落ちてしまいそうなくらいに。 けれど、実際に崩れ落ちたのはその声の持ち主ではなく、思いの外〈ほか〉自分だった。 乗り出していた身が、気が抜けたようにそのまま下降して千広君の膝の上に倒れ込んだ。 「のの!」 何故こんなにも胸が痛いのか分からない。 でも、それは千広君が一生懸命に考えて出した答えで。 あたしのことを好きだと言ってくれている千広君の決断は、本人も胸を痛めない筈がないのに。 あたしがここで変なことを言い出したら1番困るのは千広君だ。 「のの、」 「ごめん・・・大丈夫だから」 千広君の膝の上から退ける。 何か言わなくちゃ。笑って何か言わなくちゃ。 「そ、そっか。うん。分かった」 「縛り付けてごめん」 「うん。いいよ。まぁちょっと屈辱だったりしたけど。でも、それも良い思い出だしね。はは」 明らかに自分が動揺しているのが分かる。 ⇒作品?レビュー ⇒モバスペ?Book? [編集] *戻る* |